代表の岩橋 増男(いわはし・ますお)と申します。
私たちの会社は九州の熊本にあります。
熊本県の南、宇土市(うとし)という場所なのですが、周りを水田や畑、牧場などに囲まれ緑豊かなところです。
熊本といえば馬刺しですよね?私自身、県内の大手メーカーで馬肉の生産を10年以上手がけた経験があります。
実際に生の食品製造に関わることで、いかに品質管理が大事かを肌で感じてきました。
そのあと独立し、食品製造のプロとして様々なメーカーさんの企画を形にして来ました。
昨年54歳を迎えた私は、高校の同窓会に出席しました。
久しぶりに会う友人たちと、初めは昔話に花を咲かせておりました。
しかしお互いにいい年齢です。そのうち話題は自然と健康に関することに変わっていきました。
その話の中で、食事制限をしている友人が多いことにとても驚きました。
私自身も多少は食事に気を遣っていましたが、腎臓病や糖尿病を抱える友人の苦労とは比べ物になりませんでした。
さらに、糖質やタンパク質、カロリーを制限する食事というのは本人もさることながら奥様やご家族にかなりの負担がかかっていることも知りました。
とある友人は共働きなのですが、奥様の休日に一週間分の食事を準備しているとのこと。
これは大変なストレスだと感じた私は、何とかその負担を軽くできないかと思ったのです。
「独立してから13年、様々な食品を開発してきた食品製造のプロとして何とかしたい!できるはずだ!」その思いは日に日に増していきました。
そこでふと、友人の言葉を思い出したのです。
『ときどき無性にカレーが食べたくなって、食事制限用のレトルトカレーを買いに行くんだよ。
ただ、お店は遠いし、種類も少ないんだよね・・・』
これだ!!私は決めました。
食事制限やダイエットを頑張る人のために、美味しいレトルトカレーを作ろう。
しかも、より体にやさしい無添加で!
ここから低糖質・低タンパク・低カロリーの無添加レトルトカレーの開発に明け暮れる日々が始まったのでした。
いざ、低糖質、低塩、低カロリーでカレーをつくろうと思いたち、しかも無添加でという条件を自分に課しました。
この日から「五訂食品成分表」が愛読書となります。
まず、最初に自社のカレーの材料を調べてみました。
小麦粉、ケチャップ、フルーツチャツネ、デミグラスソース(小麦粉が入っている)、糖類、でんぷんなどなど。
これらはすべて糖質なので、使いたくありません。
次に添加物、または添加物が入っている材料を調べてみました。
ウスターソース、チキンコンソメ、カラメル色素、増粘剤、デミグラスソースなど。これらも使用できません。
さらに低塩、低カロリーの視点で材料を見ると、バター、サラダ油などの油脂類、食塩など。当然これらも使いたくありません。
ここまで調べてわかったこと。
いかにレトルトカレーが高糖質、高カロリーで、添加物も入っているか!うすうす感じてはいましたが、なかなかにハードルが高そうです・・・
試しに、上にあげた材料を使わずにカレーを造ってみました。すると、サラサラした水のようなものにカレー粉の味だけで、旨みなどはまったく感じられません。
何となく想像は出来ていたものの、やはりまずくて食べられません。
味はいったん置いといて、まずは材料!とにかく無添加で低糖質という条件で集めてみました。
カレーに使う野菜は、にんじん、玉ネギ、じゃがいもが定番ですよね。
でも、愛読書の五訂食品成分表(以下・愛読書)で糖質を調べてみると、
じゃがいも ×
にんじん △
玉ネギ △
にんじんは△
ですが、糖質が高いというイメージを持っている人が多いと聞いたことがあります。
そこで今回は玉ネギだけを使う事にしました。
さて、その他の野菜は何を使おう?
そんな折、地元のJAの方から茄子とトマトで何か加工品が作れないかとお話を頂いたのです。
聞けば、熊本市は茄子の生産量日本一(市町村単位)、さらに熊本県はトマトの生産量で日本一(県単位)だとか!トマトはトマトピューレやケチャップでいつもお世話になっていますが、茄子とはほとんど縁がありませんでした。
とにかく材料をいったん預かり、茄子を少し切って食べてみました。
「あ、甘い!」これにはビックリしました。
今まで焼き茄子とか、味噌汁の具、天ぷらの材料とか、麻婆茄子ぐらいでしか食べたことがないので自社の製品の原料に使うことなど考えてもいませんでした。
早速ペースト状にして試食してみると、やっぱり甘い!
これはカレーに使えると思い成分表で調べると、茄子もトマトも○だったのです。
一般的なカレーを製造するときは、ケチャップやチャツネ、時にはミリンや砂糖、還元糖などを使う事が多いです。
しかし今回は、どれも使いにくい・・・そこで頼れるのは果実しかないと思い、成分表とにらめっこした結果、りんごに決定。
りんごは、品種や時期により味が変わるので無添加のピューレを使う事に。
ただし、果物といえども甘み=糖質なので、そんなに多くは使えません。
カレーの旨味は色々な材料を組み合わせて造り出しますが、今回は使わないもの・使えないものが多過ぎます。
手始めとしてケチャップのかわりにトマトペーストを使ってみましたが、カレー味のハヤシライスになってしまいました。(これは将来、低糖質のハヤシライスを開発しようと思うきっかけになりました)
次に無添加のコンソメ、デミグラスソース、ワイン、酵母エキスで味の基本を作ってみました。
すると、これがなかなか旨い!
見た目もカラメルを使わずとも、ややブラウン系に近づいた。
これで完成間近かと思いました。しかし・・・
小麦粉やでんぷんは糖質の関係で使いにくいという問題がありました。
無添加という事で増粘剤も使えません。
日本人が好む「とろみ」のあるカレーに仕上げるためにどうするか?頭が痛くなってきました・・・
いっその事、小麦粉を使わないインド風カレーにしてしまおうかと思い愛読書で調べてみました
。でも、カシューナッツやココナッツパウダーは×と判断せざるを得ませんでした。
ならば同じサラサラ系のタイ風カレーを、と思いました。
しかし多くの皆さんから「先にとろみのある欧風カレーを作ってほしい!」と言われてあえなく断念。
とろみがつきそうで炭水化物の少ないものを愛読書で探す日々が続く中、ふと大豆に着目。
その日のうちに試作し、大豆を粉にしたものを小麦粉の代わりに入れてみました。
小麦粉と同じ感じとはいえず、しかもとろみを出すために小麦粉の2倍近い量を要してしまいました。
肝心の味はというと、モサモサした食感で要するにまずい!ふすま粉も取り寄せてみましたが、結果は大豆粉と同じでした。
ここまで来ると、増粘剤を使ってしまおうかという誘惑にかられる毎日・・・しかしそれでは「体に良い商品を作りたいから、添加物は使わない」という最初の信念が崩れてしまいます。
弱気になった自分が恥ずかしくなりました。
そんなある日、コンニャク屋をやっている知人の事を思い出しました。
その人いわく『コンニャクは、少量のコンニャク粉と水をアルカリ物質で固めている』とのこと。
『ダメ元でやってみるか』と思い、さっそく鍋の前へ。
すると何と!ほど良いとろみが出たではありませんか。
しかし後味に『のり』のような食感が残るのが気になる・・・そこから試行錯誤を何十回と繰り返しました。
他の材料とのバランスを取り、後味の問題は解消することが出来たのです。
やれやれ、どうにか形になりそう・・・
やっとの思いで出来上がったカレーソース。
これを基に、徹底して脂肪を取り除いた牛肉を加えてビーフカレーが完成しました!
あとはバリエーション。ポーク、チキン、シーフード、きのこ、野菜、具材を替えれば6種類はできるぞ、と思いました。
さて次はタンパク質調整カレーに挑戦!と思ったその時、自分の頭のなかに天の声が響きました。
『ちょっと待て!それぞれの具材に合ったカレーソースを作るべし』・・・それは地獄からの声に聞こえました。
いやいや、これはお客様からの声なのだ!と思い直して再び試行錯誤の日々。
そしてようやくチキンカレー、シーフードカレーを完成にこぎつけました。
こうして世に出せることになった低糖質、低カロリー、無添加で美味しいレトルトカレー。
ひとつずつ、ひとつずつ、納得できる形で出来上がったものから提供していきます。
お客様の健康のため、ご家族のため。
何より食事制限を少しでも解消できますように。